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「誰が集まったか」から「どんな音を鳴らすか」へ
オーディション番組で選ばれた演奏者たちが、一つのバンドとして自分たちの音を探し始めている。韓国の5人組新人バンド、hrtz.wav(ハツウェーブ)が9日、2枚目のミニアルバム『The Second Wave : MOMENTUM』を発表した。今回、音楽の軸に据えたのは、シンセサイザーの電子的な音色を生かすシンセポップだ。若者の恋心や将来への思いを、5人の合奏と鮮明な電子音で表現する。
ソウル市城東区で開かれた発売記念ショーケースで、メンバーは成長した音楽と楽しいエネルギーを届けたいという考えを示した。韓国の音楽業界でいうショーケースは、新曲の披露や作品についての説明を通じ、新たな活動の出発点を伝える場だ。日本でいえば、新作発表会とお披露目ライブを組み合わせたものと考えると分かりやすい。そこで5人が語ったのは、単に新しいジャンルに挑戦したという話ではなく、自分たちに似合う音をどう見つけるかという課題だった。
注目したいのは、結成の経緯と今回の制作姿勢の違いである。hrtz.wavは、韓国の音楽チャンネルMnetのバンド競演番組『スティールハートクラブ』で、各ポジションの1位となったメンバーによって構成された。出発点には個人の評価がある。しかし、バンドとして問われるのは、その評価を並べた先に何が生まれるかだ。2作目は、個々の強みを紹介する段階から、5人でしかつくれない音を模索する段階への動きとして読むことができる。
シンセポップは、バンドらしさを薄めるのか
シンセポップとは、シンセサイザーでつくる電子音を中心的な要素にしたポップ音楽を指す。きらめくような高音も、柔らかく広がる背景音も、輪郭のはっきりしたフレーズも表現できる。日本の読者なら、YMOなどを通じて親しまれた電子音のポップスや、1980年代の音楽を思わせる音色を入口にするとイメージしやすいだろう。ただし、これはジャンルを理解するための比較であり、hrtz.wavがYMOから直接影響を受けたという意味ではない。
バンドと聞くと、ギターのひずみやドラムの勢いをまず思い浮かべる人もいる。そのため、電子音を前に出す選択は、ロックから距離を置くことのように見えるかもしれない。だが、今回メンバーが説明した狙いは、5人それぞれの個性を引き出し、演奏の表現を広げることだった。生楽器か電子音かという二者択一ではなく、それらをどのように組み合わせればチームの魅力が伝わるか、という発想である。
この違いは、作品の受け止め方にも関わる。シンセサイザーが目立つからといって、キーボードだけが主役になったと判断するのは早い。電子音の広がりをベースがどう支え、ドラムがどんな動きをつくり、ギターと歌がその中でどこに位置するか。そうした関係こそがバンドの音になる。今回のジャンル選択は、流行の衣装を着せるというより、メンバー同士の組み合わせを見直す試みとして捉えたい。
看板曲『ALIVE』、RIIZEソンチャン参加の先にあるもの
アルバムの看板曲に当たる『ALIVE』には、韓国のグループRIIZEのソンチャンがフィーチャリングで参加した。韓国で使われる「タイトル曲」という言葉は、必ずしもアルバムと同じ題名の曲を意味しない。作品を代表し、活動の中心となる楽曲を指すことが多い。日本のリスナーには、リード曲と説明するのが近いだろう。『ALIVE』は、hrtz.wavが今回の変化を最初に印象づける役割を担う。
楽曲は、リズムを感じさせる中程度のテンポに、レトロなシンセサイザーの音色を重ねた構成だ。歌われるのは、互いに引かれるうちに次第にはっきりしていく感情と、そこから生まれる力強いエネルギーである。青春の高揚感を、速いテンポや大きな音だけで表すのではない。体を動かしたくなる拍子や、懐かしさも感じさせる音色によって、気持ちが動く様子を描こうとしている。
ソンチャンの参加は、RIIZEを聴いてきた人がバンドの作品に触れる入口になり得る。ただし、現時点で聴取者がどれほど広がったかを示す数字は、今回の情報にはない。また、提供された内容だけでは、ソンチャンが制作や演奏のどの部分にどこまで関わったかも判断できない。協業の話題性と楽曲そのものの評価は分けて考える必要がある。ゲストの名前で再生した後、5人の音がどんな印象を残すかが、バンドにとっては大切になる。
6曲に散りばめた、恋心だけではない青春
ミニアルバムには『ALIVE』を含む全6曲を収めた。ミニアルバムは、韓国の音楽活動でよく用いられる作品形態で、日本でいうミニアルバムやEPにおおむね相当する。フルアルバムよりコンパクトなまとまりで、その時点の音楽的な方向性を示すことができる。今回も、シンセポップという共通の説明だけでなく、収録曲がどんな感情を取り上げているかを見ると、作品の輪郭がつかみやすい。
『Mind』は、誰かを恋しく思う気持ちを率直に描く。『Sunday Morning』では、初々しいときめきを軽快に表現する。一方、『Play My Guitar』が扱うのは、ロックスターを夢見ながら成長する姿だ。誰かに引かれること、離れた相手を思うこと、自分の未来に期待すること。異なる場面ではあるが、いずれも若い世代が人との関係を結び、自分の進路を考える過程に重なる。
「青春」や「成長」という言葉は、音楽の紹介では便利な半面、抽象的にもなりやすい。今回の曲の説明からは、それを日常の感情に置き換えようとする姿勢がうかがえる。夢を持つ人がいつも前向きとは限らず、恋のときめきと寂しさも別々の日に訪れる。そうした複数の表情を一枚に置くことで、聴き手は自分の気分に近い曲から作品に入れる。ただし、6曲すべてが一続きの物語を構成しているとまでは確認できない。
身近な気持ちを、新しい音で伝える
ボーカルのリアンは、同世代が感じそうな具体的な感情を多く盛り込もうとしたと説明した。音楽面では、ポップなシンセサイザーの音を取り入れ、サウンドとパフォーマンスの両方を豊かにする意図があったという。ここには、二つの方向がある。題材は聴き手に近いところへ寄せ、表現方法はこれまでより広げる。難解な設定を共有しなくても、感情から音楽に触れられるようにする考え方だ。
これは日本の読者にも理解しやすい。通学中に聴く曲、休日の朝に流す曲、気持ちを切り替えたいときに選ぶ曲では、求めるものが少しずつ違う。作品中の具体的な感情は、そうした聴き方と接点を持つ。ただし、日本の学校生活や日本の若者の体験を歌った作品というわけではない。言葉や社会環境が違っていても、会いたい相手を思い出す気持ちや、将来の自分を思い描く感覚に、聴き手が重ねられる部分があるということだ。
一方、なじみのある題材を扱うほど、音楽としてどう印象を残すかが重要になる。シンセサイザーの導入は、そのための手段の一つと考えられる。同じ「ときめき」でも、音の立ち上がりが鋭いのか、柔らかく包むのかによって受け取り方は変わる。歌詞だけで意味を伝えるのではなく、演奏や音色でも感情を届ける。リアンの説明は、言葉とサウンドを別々に扱わず、補い合うものとして設計しようとする姿勢を示している。
個人のための曲から、5人のための曲へ
hrtz.wavの編成は、ユン・ヨンジュンがキーボード、リアンがボーカル、デインがベース、ケイテンがギター、ハギワがドラムを担当する。それぞれ異なる役割で番組の評価を得た5人だが、個々の技量が高ければ自動的に一体感が生まれるわけではない。歌を際立たせる場面では楽器が引き、リズムを聴かせる場面では別のパートが前に出る。バンドとしての個性は、そうした関係の積み重ねにも表れる。
ベースのデインは、自分とリアンが個人のために曲を書いていた段階から、チームの色を考える方向へ移ったと語った。メンバーそれぞれの強みを考える中で、これまでと違う音を取り入れようという発想が生まれ、シンセサイザーを選んだという。重要なのは、最初にジャンル名があったわけではなく、誰とどんな音楽をつくるかという検討の先に、その選択があったと説明している点だ。
オーディション番組出身のグループでは、視聴者が個々の出演者を応援するところから関心が始まる。その入口は強みである一方、番組が終わった後には、作品を通じて新しい関係を築かなければならない。hrtz.wavの場合、今回の発言から読み取れるのは、個人の持ち味を捨てて均一になるのではなく、それをチームの中でどう機能させるかという模索だ。番組での順位と、今後の作品の評価は同じものではない。2枚目の意味は、その違いに向き合うところにもある。
日本にとっての接点――K-POPとバンドを分けずに聴く
日本の音楽ファンにとって今回の作品は、韓国の音楽をダンスグループ中心のイメージだけで捉えず、バンドの演奏や音づくりから聴く入口になる。日本では、ギター、ベース、ドラムを軸にしたバンドと、キーボードや電子音を組み込むポップスの双方が親しまれてきた。hrtz.wavの試みも、「韓国だから新しい」というより、日本のリスナーが知る音楽の楽しみ方とどこが重なり、どこに違いがあるかを考えると近づきやすい。
例えば、普段はバンドの合奏を重視する人なら、ベースとドラムがつくるリズムに電子音がどう乗るかに注目できる。K-POPのボーカルや楽曲構成に関心がある人なら、『ALIVE』の歌とソンチャンの参加を入口に、ほかの収録曲へ進める。シンセサイザーを含むバンド編成自体は、日本でも珍しいものではない。比較の焦点は編成の新奇さではなく、5人がそれをどう自分たちの表現にしているかに置くのが適切だ。
もっとも、今回提供された情報には、日本公演、日本語作品、日本企業との契約、日本での販売実績は示されていない。したがって、このアルバムが直ちに日本市場の勢力図を変える、あるいは日本進出の具体的な一歩になるとは言えない。日韓の音楽交流という観点でも、現段階で確認できるのは作品を比較して楽しめる接点であり、新たな事業や交流企画ではない。今後、日本向けの活動が発表されるかどうかは、楽曲の反応とは別に確かめていく必要がある。
チーム名が示す「心」と「音」、問われるのは実際の合奏
hrtz.wavという表記には、心と音を結びつける考えが込められている。チーム側の説明では、「hrtz」は心と音の周波数を意味し、「wav」は高音質のサウンドと波動を象徴する。日本の読者には、音声ファイルの拡張子を思わせる後半部分が記憶に残るかもしれない。ただし、この名称はあくまでチームの理念を表すもので、配信される楽曲の音声仕様や音質を保証する説明ではない。
今回の作品は、その名前と結びつけて理解することもできる。同世代の思いを歌詞に置くのが「心」の側面なら、シンセサイザーを通じて音色の幅を広げるのは「音」の側面だ。タイトルにある「第2の波」は2枚目の作品という節目に重なり、「MOMENTUM」という言葉は勢いや弾みを連想させる。成長を掲げる新人バンドの現在地を示す題名として受け取れるが、それだけで音楽的な成果が証明されるわけではない。
実際に耳を傾ける際には、まず歌声と各楽器の関係を確かめたい。電子音が加わっても言葉が届くか、合奏に各メンバーの持ち味が残っているか、曲ごとの感情に音の違いがあるか。こうした点を見ることで、作品の説明と実際の表現を結びつけられる。新しいジャンル名を掲げたことより、そのジャンルを使って何を伝えられるようになったかが、2作目の評価を左右する。
フェスの現場で磨く音、ロラパルーザは将来の目標
hrtz.wavは音楽フェスティバルへの出演を通じてライブ経験を積み、公演を終えるたびに足りなかった点を確認しているという。新人バンドにとって、録音作品を仕上げることと、観客の前で曲を届けることは密接につながりながらも別の課題だ。音源では細部まで調整できるが、ライブではその場の演奏や音のバランス、客席への伝わり方が問われる。公演後の点検は、成長という言葉を日々の作業に置き換える取り組みといえる。
今回、メンバーは音とパフォーマンスを同時に豊かにしたいと説明している。ならば、シンセポップへの挑戦が舞台でどのように伝わるかも重要な確認点になる。電子的な音色と生の演奏が互いの魅力を引き出すのか、歌やリズムの勢いを観客が感じられるのか。ただし、新曲のライブでの成果や、具体的な演奏システムは今回の情報からは分からない。現時点で評価できるのは、改善点を振り返る姿勢を示していることだ。
デインが将来立ちたい舞台として挙げたのは、世界的な音楽フェスティバル、ロラパルーザである。目標は、出演者の中でも中心的な位置を占めるヘッドライナー。日本の読者なら、フジロックやサマーソニックの看板出演者を思い浮かべると、その意味をつかみやすいだろう。ただし、これはあくまで長期的な夢であり、ロラパルーザへの出演決定を知らせたものではない。日本のフェスへの出演予定が示されたわけでもない。
次に見るべきは、話題の大きさより音の定着
今回の発表だけで、韓国のバンド全体がシンセポップへ向かっていると結論づけることはできない。販売数やチャート、聴取者の動向も示されておらず、市場の変化を数字で語れる段階ではない。それでも、一つの新人バンドの成長過程として見ると、注目すべき変化ははっきりしている。個人に合う曲からチームに合う曲へ、青春という大きな言葉から身近な感情へ、そして従来の合奏に新たな音色を加える方向へと、制作の視点が動いている。
今後確かめたいのは、その変化が今回限りの色合いにとどまるのか、バンドの音楽性として根づいていくのかだ。『ALIVE』の協業がきっかけになっても、ほかの収録曲が聴き続けられるかどうかは別の問題になる。フェスでの経験が次の演奏や制作にどう反映されるかも見どころだ。大きな舞台を目指す言葉だけでなく、その前にある小さな修正と選択を追うことで、5人の成長をより具体的に捉えられる。
日本のリスナーも、まずは「韓国のオーディション番組から生まれたバンド」という肩書を入口にしつつ、その先の音を聴けばいい。誰かを思う歌と、音楽家になりたいという夢が、同じ一枚の中にある。その感情を5人がどう分担し、どう一つの演奏にするのか。『The Second Wave : MOMENTUM』が差し出すのは、成功を確約する物語ではない。個々の才能を集めたチームが、自分たちの響きを見つけようとする、現在進行形の試みである。
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