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9月, 2026の投稿を表示しています

韓国・麗水順天事件から78年、追悼式が問う「国家の記憶」 遺族尊重と和解へ動き出す全羅南道

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記事の理解を助けるための画像 78周年の合同追悼式、準備が本格化 韓国南西部の全羅南道で、現代史の大きな傷の一つである「麗水・順天10・19事件」、通称「麗順事件」の犠牲者を悼む合同追悼式の準備が本格的に始まった。全南・光州統合特別市は9月4日、東部庁舎で第1回説明会を開き、10月19日に順天市の五泉グリーン広場で予定する第78周年合同追悼式の基本方針や構成案を示した。 追悼式には遺族をはじめ、政府関係者や国会議員ら約800人の参加が想定されている。説明会では式典の進行だけでなく、会場の運営方法、遺族の移動や休憩などに配慮した受け入れ態勢、多数の参加者を見込んだ安全管理についても意見が交わされた。今後、遺族代表や事件の真相究明に関わる中央委員会、開催地の順天市などと協議し、具体的なプログラムを固める。 主催側が掲げる中心的な原則は、犠牲者と遺族を式典の「主人公」として位置づけることだ。大規模な行事では、ともすれば政府要人の発言や政治的なメッセージに注目が集まりやすい。しかし今回は、犠牲者の尊厳を守り、長い間苦痛を抱えてきた遺族を礼遇することを最優先にするとの方向が確認された。事件を特定の地域だけの悲劇として閉じ込めず、世代を超えて共有し、和解と共生につなげる場にしたいという。 麗水・順天10・19事件とは何だったのか 日本の読者にとって「麗順事件」という名称は、済州島の「四・三事件」や朝鮮戦争ほど知られていないかもしれない。事件は1948年10月19日、南部の港町・麗水に駐屯していた韓国軍第14連隊の一部が、済州島で続いていた武装蜂起の鎮圧命令を拒否したことをきっかけに始まった。反乱部隊は麗水や隣接する順天などを一時掌握したが、政府軍によって鎮圧された。その過程と前後の取り締まりで、武装勢力や軍人だけでなく、多数の民間人が犠牲になったとされる。 背景には、1945年の日本の敗戦と朝鮮半島の解放後、南北分断が固定化していく激動の情勢があった。大韓民国政府が成立したのは事件発生のわずか約2カ月前で、国家体制はまだ不安定だった。左右の政治対立が先鋭化し、反共政策の下で「協力者」や「容疑者」と見なされた住民が十分な手続きを経ずに拘束、処刑される事例も相次いだ。誰が反乱に直接関与したのか、誰が巻き込まれただけなのかを区別しないまま、村や家族単位で疑いをかけられたケースもあ...

「買収」と「合併」は何が違う? 相次ぐM&A報道を読み解くための基礎知識

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記事の理解を助けるための画像 大型企業の名前が並ぶ時こそ、見出しだけで判断しない 人工知能(AI)、保険、小売り、メディア、日用品――。韓国で2026年9月5日、幅広い業界のM&Aを扱う記事が相次いで検索され、「買収」と「合併」の違いにも関心が集まった。関連する見出しには、米半導体大手エヌビディアとAI開発者向けプラットフォームのハギングフェイス、韓国の保険会社による海外企業の買収構想、経営再建が焦点となっている大型スーパーのホームプラス、米パラマウントとワーナーをめぐる再編観測など、知名度の高い企業名が並んだ。 ただし、ここで最初に押さえるべき点がある。今回示された資料は、個々の案件について契約条件、交渉の進み具合、当事者による正式発表、規制当局の承認、最終的な成立の有無まで確認できる内容ではない。記事の見出しに「買収」「合併」とあっても、それが確定した取引とは限らない。企業側が選択肢の一つとして検討している段階、入札候補として名前が挙がった段階、あるいは市場関係者の観測にすぎない場合もある。 とりわけ巨額の数字や世界的企業の名前が含まれるニュースは拡散しやすい。「買収へ」と「買収を検討」、「交渉中」と「契約締結」、「合意」と「手続き完了」では、意味が大きく異なる。韓国の検索動向は、複数業界の大型案件が同じ日に注目されたことで、読者が改めてM&Aという言葉の意味を確認しようとした現象とみるのが妥当だろう。 買収は会社が残ることも、合併は法人が一つになる M&Aは英語のMerger and Acquisitionを略した言葉で、日本でも一般的に「企業の合併・買収」と説明される。ただ、買収と合併は同じ取引ではない。最も分かりやすい見分け方は、取引後に対象会社が別会社として残るかどうかだ。 買収とは、ある企業や投資家が別の企業の株式または資産を取得し、経営権を握ることを指す。例えばA社がB社の議決権のある株式を取得して支配権を得ても、B社という法人やブランド、雇用契約、取引関係がそのまま残る場合がある。身近な感覚でいえば、店の看板は変わらなくてもオーナーが交代するケースに近い。親会社と子会社という関係になり、両社が別法人として並存することも珍しくない。 これに対し合併は、二つ以上の会社が法的、実質的に一つの会社になる手続きだ。少なくとも一つの...

教室が突然「生存の最前線」に――『今、私たちの学校は…』が示した韓国発ゾンビ作品の強さ

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記事の理解を助けるための画像 日常の象徴だった学校が、逃げ場のない戦場に変わる 朝、制服を着て登校し、同じ教室で授業を受け、休み時間には友人と話す。そんな高校生の日常が、一つの感染をきっかけに崩れ落ちる。韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』は、どこにでもありそうな高校を舞台に、ゾンビウイルスの拡大と、生徒たちの生存を描いたシリーズだ。Netflixで2022年1月28日から公開され、韓国の学校文化と世界的に定着したゾンビジャンルを組み合わせた作品として注目を集めた。 物語の中心となるのは、架空の効山高校だ。感染が校内で広がると、教室や廊下、階段、体育施設といった日常の空間は、たちまち危険地帯へ変わる。生徒たちは十分な装備も情報もないまま学校に取り残され、迫り来る感染者から逃げながら、限られた場所と道具を使って生き延びようとする。一方、学校の外では軍や消防、警察などが対応に動き、救助を待つ生徒たちとの距離が物語の緊張を高めていく。 ゾンビ作品では、都市全体や隔離施設が舞台になることも多い。しかし本作が選んだのは、高校という閉鎖的でありながら、多くの視聴者にとって記憶に近い場所だった。勉強する場所、友人をつくる場所、時には人間関係に悩む場所が、突然「誰を信じ、どこへ逃げるか」を判断しなければならない生存空間になる。この落差こそが、本作の恐怖を支える大きな仕掛けである。 演出はイ・ジェギュとキム・ナムス、脚本はチョン・ソンイルが担当した。多数の登場人物を配置しながら、感染の進行だけでなく、生徒同士の友情、好意、反発、孤立といった感情を並行して描く。視聴者はゾンビから逃げる展開を追うと同時に、教室内ですでに形成されていた人間関係が非常時にどう変化するのかを見ることになる。 なぜ「高校」と「ゾンビ」の組み合わせが効いたのか 本作の独自性は、ゾンビという国境を越えて理解されやすいジャンルに、韓国の高校生活という具体的な舞台を重ねた点にある。感染、逃走、籠城、救助というゾンビ作品の基本的な構図は、海外の視聴者にも伝わりやすい。一方で、登場人物の立場や関係には韓国の学校文化が色濃く反映されている。そのため、物語の入口は普遍的でありながら、作品の表情は韓国固有のものになった。 例えば、チェ・ナムラはクラスの「班長」として登場する。韓国語の「班長」は、日本の学校でいえば学級委員長やク...

韓国の検索急上昇に映る「暮らしの不安」と娯楽への関心――国際結婚、年12%積金、Netflix作品が同居した一日

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記事の理解を助けるための画像 検索窓が映した韓国社会の現在地 韓国で2026年9月5日に急上昇したGoogle検索語を見ると、社会事件、子育て世帯向け金融商品、済州島の強風被害、動画配信作品、芸能人の暮らしといった異なるテーマが一つのランキングに並んだ。1位は「国際結婚」、2位は地域金融機関「セマウル金庫」、3位は「熱帯低気圧」。その後にはNetflix作品の題名である「スキャンダル」、暗号資産、コメディアンのキム・ジュノらが続いた。検索規模の目安ではキム・ジュノが1万件超、セマウル金庫が5000件超とされ、順位と検索数が単純には一致していない点にも注意が必要だ。 この日の特徴は、公共性の高い出来事と、私的な好奇心を刺激する話題がほぼ同じ強さで消費されたことにある。国際結婚をめぐる死亡事件や気象災害のように安全と人命に関わる検索がある一方、芸能人の新婚住宅、衣装、買い物といった軽い話題も上位に入った。これは社会問題への関心が薄れたという意味ではない。スマートフォンの検索画面では、災害情報を確認する行動も、話題のドラマの出演者を調べる行動も、同じ一回の検索として記録される。急上昇ワードは世論調査ではなく、人々がその瞬間に「もう少し知りたい」と感じた対象の記録なのである。 また、Googleが示す数値は厳密な閲覧者数ではなく、一定時間内の検索動向を示す概算値だ。検索数が大きいからといって、その問題への賛否や社会的重要性まで判断することはできない。見出しの言葉が強ければ、内容を確かめようとする検索も増える。ランキングを読む際には、何が注目されたかだけでなく、どのような見出しや生活上の必要が検索を動かしたのかを分けて考える必要がある。 「国際結婚」が事件名のように検索された危うさ 1位の「国際結婚」は約2000件超とされる。検索増加の直接的な背景として浮かぶのは、ベトナム人女性と結婚した韓国人の50代男性が、結婚から約90日後に死亡したとする複数の報道だ。一部の見出しは、男性が残したとされる遺書や暴行被害の訴えを前面に出した。ただし、提示された記事見出しだけでは死亡に至った詳しい経緯も、関係者の法的責任も確定できない。捜査や司法判断が明らかでない段階で、国籍や結婚形態を原因と結び付けることは避けるべきだ。 韓国でいう国際結婚は、都市部のグローバルな結婚だけを指す言葉では...

少女時代の新ユニット「ヒョリス」が好発進 『Skibidi』に見る、完成品より「過程」が支持されるK-POPの現在

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記事の理解を助けるための画像 冗談から生まれたユニットがチャートへ 韓国の女性グループ、少女時代のヒョヨン、ユリ、スヨンによる新ユニット「Girls’ Generation-HRS(ヒョリス)」が、デビュー曲『Skibidi』で注目を集めている。韓国メディアの報道によると、同曲は韓国最大級の音楽配信サービス「Melon(メロン)」の日間チャートに94位で初登場し、リアルタイムの動きを反映する「Top 100」では一時31位まで上昇した。パフォーマンス映像も公開から2日で509万回再生を超え、コメントは1万件以上に達したという。 数字だけを見れば、世界的な人気を持つK-POP作品として驚くほど突出した記録とは限らない。しかし、今回のポイントは、少女時代の全体活動ではなく、メンバー3人による新しい組み合わせであること、そして長期の宣伝を前提とした大型カムバックではなく、YouTube上の冗談から始まった企画が実際のデビューに発展したことにある。軽い会話から生まれたアイデアが、視聴者の反応を受けて音楽作品となり、チャートと再生回数の双方で結果を出した。そこに、現在のK-POPビジネスを読み解く手掛かりがある。 少女時代は2007年に韓国でデビューし、日本でも『GENIE』『Gee』などを通じて広く知られたグループだ。日本における第2次韓流ブームを象徴する存在の一つであり、K-POPが一部の愛好家だけでなく、テレビ、カラオケ、ファッション誌まで浸透していく過程を支えた。デビューから長い時間を経た今も、メンバーは歌手、俳優、タレント、DJなど、それぞれの分野で活動している。ヒョリスは、そうしたキャリアを積んだ3人が、少女時代の看板を生かしながらも過去の再現にはとどまらない道を選んだ企画といえる。 韓国で重みを持つ「Melon日間チャート」 日本の読者にとって、YouTubeの再生回数は分かりやすくても、Melonの日間94位がどれほどの意味を持つのかはつかみにくいかもしれない。Melonは韓国を代表する音楽配信サービスで、国内の一般利用者が日常的に聴く楽曲の動向を測る指標として長く注目されてきた。韓国の音楽ファンや業界関係者は、短時間の集中的な再生だけでなく、日間、週間、月間といった比較的長い単位の順位から、曲が幅広いリスナーに定着しているかを判断する。 とりわけ日間To...

韓国政権を揺らす閣僚候補の「選別防衛」 若者の公平感と与党の距離戦略

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記事の理解を助けるための画像 同じ閣僚候補でも異なる与党の対応 韓国の与党「共に民主党」が、閣僚候補者をめぐる相次ぐ疑惑に対し、候補者ごとに防衛の強度を変え始めた。焦点となっているのは、法務部長官候補の金勝源(キム・スンウォン)氏と、性平等家族部長官候補の龍慧仁(ヨン・ヘイン)氏だ。ともに国会の人事聴聞会を控える立場だが、党は金氏への批判には公然と反論する一方、龍氏については公式な擁護を控えている。 違いが鮮明になったのは4日に開かれた共に民主党の最高委員会だった。韓秉道(ハン・ビョンド)院内代表らを中心に、新薬に関する口利き疑惑で批判を受ける金氏を支援する発言が相次いだ。しかし、龍氏をめぐる論争への言及はなく、党としての個別の論評も出されなかった。辞任を正面から求めたわけではないものの、党の信用をかけてまで候補者を守る姿勢は示さなかった。 韓国政治では、大統領が指名した閣僚候補者について国会が人事聴聞会を開き、経歴、資産、倫理面、政策能力などを検証する。聴聞会はしばしば政策論争よりも、本人や家族の疑惑をめぐる激しい攻防の場となる。候補者の問題が大きくなれば、任命権者である大統領だけでなく、政権を支える与党にも政治的な責任が及ぶ。そのため、誰をどこまで守るかは、単なる広報対応ではなく政権運営上の判断となる。 「身内」と「非所属」が分けた防衛ライン 二人への対応を分けた要因の一つは、与党との所属関係だ。金氏は共に民主党が直接防衛する政治的な理由が明確である。一方、龍氏は同党所属ではない。党指導部から見れば、李在明(イ・ジェミョン)大統領の人事権は尊重しなければならないものの、別の政党に属する候補者の問題まで全面的に引き受ける必要があるのか、慎重に見極めざるを得ない。 これは、明確な反対でも積極的な支持でもない「政治的な距離の調整」といえる。党が候補者の辞任を要求すれば、大統領の人選を公然と否定することになる。逆に全面的に擁護すれば、疑惑や批判が拡大した際に党全体が責任を負う。公式発言を減らし、候補者本人の判断を待つやり方は、その中間に位置する。 韓国の大統領制では、大統領と与党は密接な関係にある一方、必ずしもすべての判断を一体で行うわけではない。大統領は国政全体と人事の一貫性を重視し、与党議員は世論や次の選挙への影響をより直接的に受ける。支持率が下がる局面では、両...

支持率40%の李在明政権、労組・市民社会との対話を強化 韓国政治に映る「支持基盤固め」の次の課題

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記事の理解を助けるための画像 就任後最低の40%、政権が選んだのは足元の立て直し 韓国の李在明大統領が、労働組合や進歩系の市民団体との対話を相次いで進めている。韓国ギャラップが発表した世論調査で国政運営への支持率が40%となり、就任後の最低水準を記録するなか、まず伝統的な支持基盤との関係を固め直そうとする動きだ。幅広い層への支持拡大を急ぐより、政権の改革路線を支えてきた労働界や市民社会との接点を増やし、政治的な足場を安定させる狙いがあるとみられる。 李大統領は4日、青瓦台で進歩的な市民社会団体の関係者と面会し、今後の社会改革において市民団体が果たす役割は大きいと強調した。前日には、韓国労働組合総連盟の金東明委員長と全国民主労働組合総連盟の梁慶洙委員長に会い、政権が掲げる「3大メガプロジェクト」や定年延長などについて意見を交わした。韓国メディアは、こうした一連の日程を、支持率低下に直面した大統領が進歩陣営との結び付きを再確認する動きとして報じている。 ただし、40%という数字だけを見て、直ちに政権の危機や求心力の喪失と断定するのは早い。今回の調査は1日から3日まで、全国の成人1001人を対象に、無作為抽出した携帯電話の仮想番号へ調査員が電話をかける方式で行われた。標本誤差は95%信頼水準でプラスマイナス3.1ポイント、回答率は10.9%だった。前週から2ポイント下落したとはいえ、誤差の幅を踏まえれば、一度の調査だけで長期的な流れを決めつけることはできない。それでも就任後最低という見出しは政治的な重みを持ち、大統領府に対応を促す材料になる。 韓国政治における「市民社会」は何を意味するのか 日本の読者にとって、韓国政治のニュースに頻繁に登場する「市民社会」という言葉は、やや抽象的に感じられるかもしれない。韓国でいう市民社会団体には、人権、労働、女性、環境、福祉、平和、権力監視などの課題に取り組む多様な組織が含まれる。選挙で議席を持つ政党とは異なるが、集会や政策提言、署名運動、訴訟支援などを通じ、社会的な議題を政治の場へ押し上げてきた。 韓国の民主化以降、市民団体は政治改革や企業統治、労働問題などで存在感を示してきた。特に進歩系の団体は、保守政権への批判や社会的不平等の是正を訴える場面で重要な役割を担ってきた。一方、政府との距離が近くなりすぎれば、権力を監視する側として...

韓国で1100万人を動員した『破墓』 墓・風水・巫俗を現代の恐怖へ変えた理由

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記事の理解を助けるための画像 一本の「墓映画」が韓国社会を動かした 墓を掘り返した瞬間、封じられていた異変が動き始める――。2024年に韓国で公開されたチャン・ジェヒョン監督の映画『破墓(パミョ)』は、そんな古典的ともいえる恐怖の入り口から、韓国独自の文化や歴史意識を掘り下げたオカルト・ミステリーだ。チェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョンという知名度と実力を兼ね備えた俳優陣が出演し、風水師、巫堂、葬儀師、法師という異なる専門家たちが、不吉な墓をめぐる事件に挑む。 韓国では2024年4月までに累計観客数1095万人を記録し、同国映画史上32本目の「千万映画」となった。オカルトという、通常なら観客を選びかねないジャンルでの大台突破である。日本に単純に置き換えることはできないが、人口規模を考えれば、韓国の「千万映画」は一部の映画ファンだけでなく、家族、友人、職場の同僚まで巻き込む社会現象に近い。作品名が日常会話に上り、まだ見ていない人も内容を意識するような水準だ。 興味深いのは、『破墓』が海外の悪魔や西洋式の除霊を借りた作品ではないことだ。物語の中心にあるのは、墓地の位置を読む風水、死者や霊を鎮める巫俗、遺体を扱う葬送の手続き、経文を唱える宗教的実践である。韓国社会に昔から存在しながら、都市生活の中では表に出にくくなった世界を、現代的な映像とサスペンスの文法でスクリーンに呼び戻した。そこに、この映画の新しさと大衆性がある。 「破墓」は単なる墓荒らしではない 韓国語の原題「파묘」は漢字で「破墓」と書き、墓を開き、遺骨や棺を取り出す行為を指す。だが、映画で描かれるのは、金品目当てに墓を暴くような単純な墓荒らしではない。事情のある墓を掘り起こし、遺体を別の場所へ移す「改葬」や「移葬」に近い仕事が事件の出発点となる。依頼を受けた専門家たちは高額の報酬と引き換えに、不自然な場所に造られた墓へ向かう。 日本でも、寺院墓地から霊園へ墓を移したり、遠方の先祖代々の墓を整理したりする「改葬」は珍しくない。近年は少子高齢化や人口移動を背景に「墓じまい」という言葉も定着した。ただし、日本で墓の移転が行政手続きや承継の問題として語られることが多いのに対し、『破墓』では墓の立地そのものが子孫の運命と結びつく。土の状態、山の形、方角、周囲の気配までが、物語上の重要な情報になる。 ...

『シルミド』が韓国映画を変えた日――初の観客1000万人と、封印された国家の記憶

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記事の理解を助けるための画像 韓国で初めて「1000万人」が映画館へ向かった作品 韓国映画の歴史を振り返るとき、2003年12月24日に公開されたカン・ウソク監督の『シルミド』は避けて通れない。全国で1108万人を動員し、韓国映画として初めて観客1000万人を突破した作品だからだ。現在の韓国では、1000万人を超えるかどうかが社会現象級のヒットを測る目安として定着している。しかし、その基準を最初に現実のものとしたのが『シルミド』だった。単に興行記録を塗り替えただけではない。それまで公の場で十分に語られてこなかった現代史の暗部を、大規模な娯楽映画の中心へと引き出した点に、この作品の大きな意味がある。 原作はペク・ドンホによる同名小説。題材となったのは、韓国政府が秘密裏に編成したとされる「684部隊」と、その隊員たちが関わったシルミド事件である。映画は秘密部隊の誕生、外界から隔絶された島での訓練、作戦方針の変更による混乱、そして国家から存在そのものを切り離された人々の絶望を描く。国家機密、軍事訓練、南北対立という重い要素を扱いながら、閉鎖空間で追い詰められていく集団劇として構成したことで、歴史に詳しくない観客にも強く訴える作品となった。 韓国でいう「1000万映画」は、単なる宣伝上の数字ではない。幅広い世代が同じ作品を見て、家庭や職場、学校、テレビ番組などで語り合うほどの文化現象を意味する。『シルミド』の成功は、その後に続く大作韓国映画の製作や宣伝にも影響を与えたとみることができる。観客は華やかなスター映画だけでなく、政治的に扱いにくい現代史や国家権力の責任を問う物語にも足を運ぶ。その可能性を興行面で示した作品だった。 物語の起点となった1968年の南北対立 日本の観客がこの映画を理解するには、まず1968年1月21日に起きた事件を知る必要がある。北朝鮮の特殊部隊である124部隊の隊員31人が韓国に侵入し、当時の朴正熙大統領の暗殺を狙ったとされる事件だ。韓国では一般に「1・21事態」などと呼ばれ、南北間の軍事的緊張を象徴する出来事として記憶されている。映画の684部隊は、この侵入事件に対する報復として、北朝鮮の最高指導者だった金日成を狙う秘密作戦のために組織される。 作品では、当時の中央情報部長だった金炯旭の指示によって31人が集められたという設定が採用されている。...

映画『ソウルの春』が問い直す「権力の9時間」――韓国で1000万人を動員した現代史映画を日本からどう見るか

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記事の理解を助けるための画像 韓国社会が映画館で向き合った、1979年12月12日の夜 韓国映画『ソウルの春』(英題『12.12: THE DAY』)は、1979年12月12日に起きた軍事反乱を題材に、国家の行方を左右した一夜を描く歴史映画である。2023年に韓国で公開され、観客動員1000万人を突破した。韓国映画史上31作目の「千万映画」となり、興行面だけでなく、監督、脚本、演技、編集など幅広い部門で高い評価を受けた。 物語の出発点は、朴正熙大統領が銃撃され死亡した後、韓国全土に政治的な緊張が広がっていた時期だ。戒厳令が敷かれるなか、軍内部では次の主導権を誰が握るのかをめぐって対立が深まっていく。黄晸珉(ファン・ジョンミン)が演じる保安司令官チョン・ドゥグァンは、側近や軍内の人脈を動かし、自らの勢力による支配を固めようとする。一方、鄭雨盛(チョン・ウソン)が演じる首都警備司令官イ・テシンは、「軍は政治に介入すべきではない」という原則に立ち、反乱を阻止しようとする。 映画が描く時間は、12月12日午後7時ごろから翌13日午前4時ごろまでのおよそ9時間。それを141分の上映時間に凝縮している。観客が目にするのは、歴史の教科書に記される結論だけではない。電話一本への応答、部隊を動かす命令、上官への服従、責任回避、迷い、沈黙といった、一つ一つの判断が積み重なり、後戻りできない流れへ変わっていく過程だ。結末を知っている観客にも強い緊張を与えるのは、歴史が抽象的な「時代の動き」ではなく、その場にいた人間の選択によって形づくられることを前面に押し出しているからだ。 「12・12軍事反乱」とは何だったのか 日本の観客が作品を理解するには、背景となる韓国現代史を少し整理しておく必要がある。朴正熙政権は、経済成長を推進した一方、長期にわたる権威主義的な統治を続けた。1979年10月、朴大統領が側近によって殺害されると、韓国社会には政治的な空白が生じた。民主化への期待が高まる一方で、軍や政府の内部では権力をめぐる動きが活発になった。 そのさなかの1979年12月12日、全斗煥(チョン・ドゥファン)を中心とする軍内勢力が、軍首脳部の指揮系統を崩し、兵力を動員して実権を掌握した。韓国では一般に「12・12軍事反乱」と呼ばれる。翌1980年には軍部の政治支配がさらに強まり、市民が民主化を...

AI競争の主戦場は半導体から電力へ 韓国で浮上するLNG・蓄電池・小型原発の一体戦略

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記事の理解を助けるための画像 GPUをそろえても動かせない――AI時代の新たな壁 生成AIをめぐる競争で、これまで最も注目されてきたのは高性能半導体だった。大量のデータを高速処理するGPUを何枚確保できるかが、企業や国のAI開発力を左右すると考えられてきたからだ。しかし韓国のエネルギー業界では、競争のボトルネックが半導体から電力へ移り始めたとの見方が強まっている。数万枚規模のGPUと多数のサーバーを同時に動かすAIデータセンターでは、建物と機器が完成しても、必要な電力を安定して調達できなければ稼働を始められない。計算能力を増強しようとしても、電源や送電設備が追いつかなければ計画は止まる。電力はもはや毎月支払う運営費の一項目ではなく、データセンターの開業時期と成長速度を決める戦略資源になった。 この変化を背景に韓国で浮上しているのが、液化天然ガス(LNG)火力、電池を使ったエネルギー貯蔵システム(ESS)、小型モジュール炉(SMR)を一体的に扱う「エネルギー・オールインワン」と呼ばれる構想だ。単に発電所を建てるのではない。データセンターがいつ稼働し、どの程度の速さでサーバーを増やし、電力需要がどのように変動するのかを予測したうえで、燃料調達、発電、蓄電、供給管理、脱炭素化を組み合わせる。IT設備とエネルギー設備を別々に考えてきた従来の産業区分を越え、両者を一つのインフラとして設計しようという発想である。 なぜAIデータセンターには特別な電力設計が必要なのか 一般的なデータセンターも大量の電力を消費するが、AI向け施設では負荷の大きさと変化の速さが一段と問題になる。多数のGPUが学習や推論の処理を一斉に始めれば、電力需要は短時間で大きく動く。逆に処理が終了すれば負荷は下がる。発電量が十分でも、需要の急変に設備が対応できなければ、電圧や周波数の安定に影響し、サーバー運用のリスクとなる。AIデータセンターに求められるのは、単純な年間発電量ではなく、必要な瞬間に必要な品質の電力を届け続ける能力だ。 さらに、AIサービスは原則として24時間止めにくい。天候や時間帯で出力が変わる太陽光や風力は脱炭素化に欠かせないものの、それだけで大規模施設を常時支えるには、蓄電設備や別の調整電源、送電網との連携が必要になる。企業が掲げる温室効果ガス削減目標も無視できない。早期稼働を優先して化...

村そのものが消えたネパール大洪水 「元の場所に戻す」では済まない復旧の難しさ

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記事の理解を助けるための画像 復旧の時計を動かせない被災地 ネパールを襲った大洪水では、住宅や道路が壊れただけでなく、一部の地域で住民の暮らしを支えてきた土地そのものが流された。災害後によく使われる「復旧」という言葉は、元の状態へ戻すことを意味する。しかし、村の形や生活圏が失われた場所では、戻るべき「元」が残っていない。今回の災害が突きつけているのは、壊れた建物を直すという通常の復旧とは異なる、地域をどこに、どのように再建するのかという重い課題である。 韓国メディアの聯合ニュースが伝えた現地取材によると、ネパール中部バグマティ州ラリトプルで20年以上にわたり救援活動に携わってきた韓国人の文光鎮(ムン・グァンジン)氏は、復旧に必要な期間について「予想することさえできない」と語った。長年、現地で災害支援を経験してきた人物の言葉だけに、単なる悲観論とは受け止めにくい。被害の全体像を確認するところから難航しており、復旧計画を立てる前提となる地図さえ描き直さなければならない状況がうかがえる。 洪水は先月26日に発生した。被災地では住宅や生活インフラが破壊され、川沿いの集落では土地や道路、地域を結ぶ移動経路まで失われた。地震なら倒壊した建物の位置や、かつての道路、集落の境界を手がかりに再建を始められる場合がある。ところが洪水や土砂災害で地形が変われば、同じ場所に住宅を建て直すことが安全なのかという判断から始めなければならない。復旧期間を見積もれない最大の理由は、被害が大きいからだけではなく、復旧の出発点そのものが定まらないことにある。 2015年の大地震とは異なる「消失」の被害 ネパールでは2015年、マグニチュード7.8の大地震が発生した。約8900人が死亡し、住宅を含む建物およそ100万棟が損壊したとされる。復旧費用は約90億ドルと見積もられ、400万人を超える被災者が1年以上にわたりテントや仮設建物で暮らした。教室を失った児童・生徒も約100万人に上った。国全体の行政力や財政力を大きく上回る規模の災害だった。 文氏によれば、その大地震でも救援活動がほぼ終わるまで約3年を要した。ただし、地震では建物が元の場所で倒壊しており、住民がどこで暮らしていたのか、学校や商店がどこにあったのかを把握しやすかった。土地の安全性を確認し、がれきを撤去し、住宅や施設を再建するという順序を...

韓国の子ども用解熱鎮痛薬、体重基準でどう使う アセトアミノフェン製剤から考える家庭の安全管理

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記事の理解を助けるための画像 韓国で案内された子ども向けアセトアミノフェン製剤 韓国で、子どもの発熱や痛みに使う一般用医薬品「子どもタイレノール散160ミリグラム」の適正使用に関する情報が紹介された。販売元はケンビューコリアで、有効成分は日本でも広く知られるアセトアミノフェン。風邪に伴う発熱や痛みのほか、頭痛、筋肉痛、歯痛、関節痛、捻挫に伴う痛みなどを和らげる目的で使われる。 アセトアミノフェンは、家庭の常備薬として身近な成分である一方、量を増やせば効果が比例して高まる薬ではない。別の風邪薬や解熱鎮痛薬にも同じ成分が入っていることがあり、知らないうちに重複して服用すると、重い肝障害につながる恐れがある。今回の情報が強調しているのも、商品名ではなく成分を確認し、年齢だけでなく体重に基づいて用量を考えるという基本だ。 対象となる製品は、満7歳から12歳までの子どもが必要に応じて服用する散剤で、4~6時間の間隔を空ける。水で流し込むのではなく、舌の上に直接のせて服用するタイプとされる。ただし、年齢別の細かな量は製品の承認情報や添付文書で確認する必要がある。似た名称の製品でも、剤形や1包当たりの含有量、対象年齢が同じとは限らないため、家庭にある別製品へそのまま当てはめてはいけない。 年齢より体重を重視する理由 子どもの薬で特に重要なのが体重だ。同じ10歳でも体格には大きな差がある。年齢だけで一律に量を決めれば、小柄な子には多すぎ、大柄な子には十分でない可能性が出てくる。このため、体重が分かっている場合、今回の製品情報ではアセトアミノフェンとして1回10~15ミリグラムを体重1キログラム当たりの目安としている。 例えば、計算は体重に10または15を掛けて、1回分の有効成分量の範囲を確認するという考え方になる。ただし、その数字だけを見て保護者が粉薬を独自に分割したり、複数の商品を組み合わせたりするのは危険だ。実際に何包を使うかは、その製品にアセトアミノフェンが何ミリグラム含まれているか、製品が想定する年齢区分や服用単位がどう定められているかによって変わる。添付文書の表示と一致しない場合や計算に迷う場合は、薬剤師に確認するのが安全だ。 1日の上限については、服用回数を5回まで、かつ体重1キログラム当たり75ミリグラムまでとする注意が示されている。さらに、アセトアミノフェン全体...

韓国の「低塩レシピ」に学ぶ、平日の汁物選び テンジャン汁、シイタケと青梗菜のスープ、チコリサラダを読み解く

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記事の理解を助けるための画像 帰宅後の献立は「汁物一つと副菜一つ」で考える 仕事を終えて帰宅した後、夕食を一から組み立てるのは思った以上に負担が大きい。冷蔵庫を開けても献立が浮かばず、結局は総菜や外食に頼るという経験は、日本の働く世代にも身近だろう。韓国で紹介された今回の献立案は、そうした平日の食卓に向け、温かい汁物とさっぱりした野菜料理を組み合わせる考え方を示している。候補は、韓国の大豆発酵調味料テンジャンを使った汁物、シイタケと青梗菜のスープ、そしてオリーブ油とニンニクのドレッシングで食べるチコリサラダの三品だ。 三品すべてを同じ食卓に並べる必要はない。まず、その日の気分や主菜に合わせて二種類の汁物から一つを選び、必要ならチコリサラダを添える。つまり「汁物一品、副菜一品」という簡潔な組み立てである。ご飯と焼き魚、あるいは肉料理など主菜が決まっているなら、汁物と生野菜を追加するだけで食卓の印象は大きく変わる。何品も作ることを前提にせず、選択肢を絞る点が、忙しい人にとって現実的だ。 三つのレシピに共通するのは、塩やしょうゆを増やして味を強くするのではなく、野菜、キノコ、発酵調味料、だし素材の持ち味を使おうとしていることだ。ただし、ここで注意したいのは「減塩の工夫がある料理」と「栄養表示上のナトリウムが少ない料理」は必ずしも同じではないという点である。今回示された数値には大きな差があり、調理上のアイデアだけで判断せず、一食分の栄養情報を個別に見る必要がある。 テンジャンを増やさず、豆腐とジャガイモで満足感 最初の一品はテンジャンを使った汁物だ。テンジャンは韓国の代表的な大豆発酵調味料で、日本人には「韓国のみそ」と説明すると分かりやすい。ただし、原料の扱いや発酵方法、香り、塩味には違いがあり、日本のみそ汁とまったく同じ料理ではない。韓国の食卓では汁物を表す「クク」や、より濃く煮込む「チゲ」が日常的に登場する。今回の料理は水300ミリリットルにテンジャン5グラムを溶き、豆腐、ジャガイモ、タマネギ、ヒラタケの仲間であるエリンギ状のキノコ、長ネギを合わせる軽い汁物として考えられている。 特徴は、テンジャンを多く入れて味を完成させるのではなく、煮た豆腐、ジャガイモ、タマネギを取り出してミキサーにかけ、再び鍋に戻す工程にある。細かくした食材が汁に厚みを与え、少量のテンジャンで...

ロビンフッド・チェーンに資金活動が集中、手数料22倍が映すDeFi市場の「新規発行」熱

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記事の理解を助けるための画像 ロビンフッド・チェーンが週間データの主役に 暗号資産の分散型金融、いわゆるDeFi市場で、ロビンフッド・チェーンを舞台にした取引活動が急速に膨らんでいる。DeFiの統計サイト、DeFiLlamaで2026年9月4日時点のデータを確認すると、ロビンフッド・チェーン自体の直近7日間の手数料は1240万ドルに達した。前の7日間は56万4000ドルだったため、週間比較では約22倍という急増である。さらに、各プロジェクトの手数料を実際に発生したチェーン別に集計すると、同チェーンでは直近24時間に2480万ドル、直近30日間に1億8020万ドルの手数料が発生した。直近1日の金額は30日間の日平均の4.1倍に相当し、足元に活動が偏っていることが分かる。 ここで注意したいのは、「22倍」と「4.1倍」が異なる比較を示している点だ。22倍は、ロビンフッド・チェーンという項目の7日間手数料を、その前の7日間と比べた数字である。一方の4.1倍は、チェーン上で発生した直近24時間の手数料を、過去30日の日平均と比較した「最近集中度」だ。いずれも急な活発化を示すが、計算の対象と期間は同じではない。短期間の数字が大きく跳ねたことは確かでも、それだけで長期的な利用定着や事業の成功を意味するわけではない。 ロビンフッドは米国で個人投資家向けの株式・暗号資産取引サービスとして知られる。日本の読者には、スマートフォン証券と暗号資産交換業者を組み合わせ、さらにブロックチェーン上の金融サービスへ踏み込んだ存在と説明するとイメージしやすいだろう。今回の動きで重要なのは、単に既存の暗号資産が売買されたというより、新しいトークンを発行し、初期の取引を生み出す「ローンチパッド」関連の利用が目立っていることだ。 Pons V2の伸長、新規トークンを巡る取引が押し上げ 週間手数料ランキングで存在感を示したのが、ロビンフッド・チェーン上のローンチパッド「Pons V2」だ。直近7日間の手数料は2630万ドルで、前週の340万ドルから7.7倍に増え、全体で4位に入った。手数料のうちプロトコルやトークン保有者側に帰属する「売上高」は480万ドルだった。ローンチパッドとは、新しい暗号資産やトークンを発行し、初期販売や取引開始を支援する仕組みを指す。日本の株式市場でたとえるなら、新規株式公開の...

「行き先は当日決定」でも撮影隊は先回り 韓国人気番組の謝罪が問うリアリティー番組の“即興”

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記事の理解を助けるための画像 人気番組が認めた「即興旅行」の舞台裏 韓国の人気バラエティー番組「私は一人で暮らす」の制作陣が、出演者のカザフスタン旅行をめぐり、撮影スタッフの航空券を事前に手配し、現地側にも撮影への協力を求めていたことを認め、視聴者に謝罪した。番組では、人気司会者のチョン・ヒョンムが空港で行き先を決め、そのままカザフスタン最大の都市アルマトイへ向かう「即興旅行」として紹介されていた。予測できない選択から生まれる緊張感が企画の見どころだっただけに、放送後、画面上の印象と実際の制作準備に隔たりがあったのではないかという疑問が広がった。 制作陣の説明によると、チョン・ヒョンムが以前から関心を示していた旅行先や当時の航空便の状況を検討し、カザフスタンが選ばれる可能性が高いと判断していた。そのため、目的地が実際に決まった際、撮影チームがすぐ移動できるよう、スタッフ分の航空券をあらかじめ発券し、現地での撮影協力も要請していたという。一方で、本人については旅行当日に空港でカザフスタン行きの航空券を直接発券しており、出演者の最終的な選択まで事前に決めていたわけではないと強調した。 つまり、出演者の決断と制作側の備えは、必ずしも同じものではない。出演者は当日に目的地を選び、制作陣は有力な候補を予想して先回りしていた、という構図だ。海外ロケの安全性や時間的制約を考えれば、制作側が何の準備もせず空港で待つことは現実的ではない。ただ、番組が「即興」「無計画」という印象を強く打ち出したことで、視聴者は出演者だけでなく撮影隊も含め、すべてがその場で始まったかのように受け止めた。今回の問題の中心は、旅行先が厳密にいつ確定したかよりも、番組が示した即興性の範囲と、視聴者が理解した範囲が一致していなかった点にある。 韓国で長く支持される「私は一人で暮らす」とは 「私は一人で暮らす」は、韓国の地上波放送局MBCを代表する長寿バラエティーの一つだ。韓国語の番組名「ナ・ホンジャ・サンダ」は、文字通り「私は一人で暮らす」という意味で、芸能人の一人暮らしの日常を観察する形式を基本としている。スタジオでは出演者たちが映像を見ながら率直な感想を交わし、生活習慣や食事、人間関係、休日の過ごし方などを笑いに変えていく。 日本の視聴者に説明するなら、芸能人の私生活に密着する番組と、スタジオで映像を振...